平出油屋さんについて
平出油屋さん(会津若松市)は1841年(天保12年)創業の老舗。平出祐一氏は6代目で、化学薬品などを使わず、手間と時間をかけて菜種油とごま油を搾る玉締め圧搾法という伝統技法を守り続けてきました。
2000年6月に、私、小原直樹が「とうふ屋おはら」を開業したときから、平出油屋さんの菜種油で油揚げを揚げてきました。そのクセのない上品な味わいで当店の人気商品となりました。
ところが、2019年、平出さんが廃業を宣言。年齢と後継者不在が主な理由でした。豆腐屋も困りますが、このままでは、平出さんの技が永遠に消えてしまう。ショックを受けた私は、とりあえず油搾りを習っておこうと弟子入り。最終的に2022年末で完全廃業するまで、何度も通って教えてもらいました。弟子とはいうものの、平出さんと私は同じイノシシ年で一回り12年しか違わないため、私が中継ぎになって後継者を育成し、未来に平出さんの技をつなぎたいと思いました。もちろん、私の本業は豆腐屋で、かけもちで油を搾るのは限界があります。
クラウドファンディングに挑戦
平出さんから玉締め設備一式を譲ってもらえることになりましたが、様々な理由で別の建物を確保して設備を移設しなければなりません。修理の必要な設備や、新たに購入する必要のあるものもあります。それには多額の費用が見込まれ、自己資金だけでは足りないためにクラウドファンディングに挑戦することにしました。プラットフォームはcampfire(キャンプファイヤ)を使い、2024年6月22日から7月31日まで目標額1000万円で実施。全国の平出油ファンを中心に支援の輪が広がり、期間半ばで目標額を達成。ネクストゴールに設定した1600万円には届かなかったものの、最終的に687名の支援者から1351万4千円の支援をいただきました。
クラウドファンディングの開始直前に、大和川酒造(喜多方市)の佐藤彌右衛門会長のご協力により、築150年を超える古民家を借りることになり、二つある蔵のうちの一つを搾油施設にすることになりました。現在、保健所と相談しながら、工務店に改修計画の立案をお願いしています。
現在の予定収支
クラウドファンディングで1351万4千円のご支援をいただきましたが、campfireへの手数料、広告・宣伝費、デザイン料、リターンの経費を差し引くと、約900万円を資金にまわすことができます、
資金
クラファン資金 | 900万円 |
自己資金 | 500万円 |
資金合計 | 1400万円 |
支出見込み(税込)
建物(蔵)の改修・改築 | 836万円 |
設備の移設 | 440万円 |
新規購入設備 | 300万円 |
支出見込み合計 | 1576万円 |
(建物(蔵)の改修・改築費用は、工務店の暫定見積もりによります。)
上記のように、搾油施設関連だけで、176万円の不足が見込まれます。さらに、
- 菜種の購入費用
- ビン・缶などの包装資材購入費用
- 研修生(後継者候補)の手当
などの運転資金が別途必要になります。また、事業が軌道に乗る前に、研修生のトレーニングが必要となりますが、その手当も必要になります。
法人化 有限会社ウィズドムの活用
平出油屋さんの技と設備を未来に継承するために、搾油事業は法人化することにしました。個人事業よりも、事業継承がスムースにいくと思われたためです。新規設立という手もありましたが、たまたま私が代表取締役を務める有限会社ウィズドムが長らく休眠会社になっていたので、設立費用を抑えるために休眠を解除して復活させることにしました。このサイトは当社の会社サイトということになります。個人事業である「とうふ屋おはら」をウィズドムに統合して法人化することをこれまでに何度か検討しましたが、売上が小さく法人化のメリットがないということで見送ってきました。
「五穀豊穣村」構想
いずれ豆腐屋も有限会社ウィズドムに統合するとしても、私にしては二足の草鞋(わらじ)。豆腐屋事業と油屋事業をどのように統合して経営するのか。どうやって後継者を育成して未来にバトンタッチしていくのか。搾油施設にする蔵のある古民家には母屋(おもや)と蔵がもう一つあるが、それらをどう有効活用していくのか。農業地帯である会津地方でも農業者の高齢化、後継者難などで離農、耕作放棄地など衰退がはじまっているが、何とか応援できないものか。昔は五穀豊穣を祝ったのに、豊作だと豊作貧乏、不作だと価格高騰で消費者離れを引き起こすが、生産者も消費者もともに五穀豊穣を祝う社会は作れないのか。いろいろと考えを巡らしているうちに、「五穀豊穣村」を作ることを思いつきました。
五穀豊穣村は、インターネット上の仮想空間に存在する仮想村です。会津の居住者と都市の居住者が仮想村民となります。ウェブサイト「五穀豊穣村」では、会津の農産物(米・大豆など穀物、野菜、果実)やその加工品(豆腐、菜種油、蕎麦、味噌、納豆)を直販するだけでなく、農地や加工場の見学、体験、助っ人募集に関するお知らせを掲載する交流サイトとしても機能します。ウィズドムの直営店は豆腐屋と油屋ですが、それ以外の農家、会津の農産物の加工食品店(味噌、納豆、蕎麦)、会津の米を使う造り酒屋などに参加を呼びかけます。
そして、搾油施設のできる古民家の母屋は、そのリアルな拠点となります。
豆腐屋と古民家は、クルマで20分程離れているため、もうひとつの蔵に豆腐屋を移転するのが理想です。母屋は会津の農産物や豆腐などの加工品を販売し、昼は豆腐・油揚げの料理屋、夜は交流拠点にしたいという夢があります。
母屋内部